日本の新型コロナウイルスワクチン輸入・供給状況はどうなっているのか?

感染症

いきなり供給量が減って先が見通せなくなった新型コロナウイルスのワクチン接種。不足についての断片的な情報は報道されているのですが、全体的にどのような配送がなされていて、いつどこに何箱配られているのかがさっぱりわかりません。

しかたないので自分で調べているのですが、不明点多すぎ。とりあえず現在までに私が調べた結果をここにメモしておきます。情報お持ちの方がいらっしゃいましたら、コメントいただけると幸いです。

目次


承認済みのワクチンと契約量

新型コロナワクチンの開発状況について|厚生労働省」に一覧があります。
現在承認済みのワクチンはファイザー・アストラゼネカ・モデルナの3社製。この3社のワクチンは免疫を得るためには接種は2回必要なので、全員接種するには日本全部で2.5億回分のワクチンが必要です。

資料から3社分を抜き出すと下記の通り。アストラゼネカは現在国内で使われていないのですが、(追加契約分を含めて)ファイザー+モデルナで年内に2.5億回分は供給されそうです。

  • モデルナ: 2021年上半期4000万回分、第3四半期1000万回分
  • アストラゼネカ: 2021年第1四半期3000万回分、トータルで1.2億回分
  • ファイザー: 年内に1.44億回分、追加で第3四半期に5000万回分(合計1.94億回: cf. https://twitter.com/kantei_vaccine/status/1410972807664529408



配給体制

厚労省と自治体間の情報はV-SYSでやりとりしています。V-SYSの資料は公開されています(が、これもわかりにくい)。情報は基本的には 市町村→都道府県→厚労省 と上がっていき、決定された配給量を元に 卸業者から医療機関にワクチンが配送されます。ざっと見た感じ、V-SYSは医療機関の負担がめっちゃ多そうなシステムに見えます。

要望の集計・配給は2週間単位で行われます。この2週間の単位を厚労省では「クール」と呼び、連番を付けているようです。例えば、ファイザーの6月21日・28日の週の配給については、第8クール(PF08:Pfizer 08)と呼ばれています。



ワクチン接種はファイザーは3週間・モデルナは4週間の間隔を空けて2回打つ必要があります。この期間を超える場合は速やかに2回目を打つようにとのことです。

1回目打ったけど2回目分が足りないということは避けないといけません。しかしV-SYSではクール単位(2週間)での配送の調整しかしていないので医療機関での運用は大変そうです(しかもファイザーの保存期間は超低温冷凍庫で6ヶ月、通常の冷凍庫で14日間、冷蔵庫で5日間なので、さらに面倒)。



V-SYSの資料ではファイザーの配送はわかるのですが、モデルナの配送についての資料がさがせません。ファイザーと一緒と考えていいのだろうか?

実際の輸入量・配給量について(ファイザー)

ファイザーの配給量は厚生労働省から公開されています。PF15(2021年9月27日の週)まで累計で13万0541箱が配給される予定です。1箱あたり195バイアル、1バイアルで5-6回接種できますので、1.2-1.5億回分になります。2021年の契約数1.94億回なので、おおむね見込み通りなのだと思います。



また、ファイザーの輸入量については flyteam に第6クールまでの情報が掲載されています。上記厚労省の資料と矛盾はありません。もっと新しい資料どこかにないかな.…



上記に掲載されている数値を元に輸入量と医療従事者分・高齢者分への配給数の合計をグラフ化してみました。輸入分は1-2週間後には配給されているようです。

日本の高齢者人口は2020年に3617万人なので、PF08(6月21日・28日の週)には必要量が配給されています。そして直後のPF09(7月5日・12日の週)から配給量の減少が起こっています。

資料がないので詳細は不明ですが、これは輸入量が減ったためだと思われます。自治体接種が65歳以下に切り替わるタイミング(接種人数が増大する)に減少が重なって、混乱が発生したと思われます(追記も参照ください)。



県単位の配分量は探せば厚労省の事務連絡(PDF)に載っています。沖縄県を例に希望数・実際の配分数を見てみると、希望数が配分されたのは第4・7クールだけで、最新の第10クール(2021年7月19日・26日の週)は半分にも達しません。

クール 希望数(箱) 配分数 実績
第4クール 75 38 79
第5クール 163 133 133
第6クール 187 163 163
第7クール 114 114 114
第8クール 194 145 145
第9クール 189 162 162
第10クール 250 110 101



市町村単位の配分は断片的に報道されていますが全体像はわかりませんした。見つかった沖縄県の記事をメモしておきます。


実際の輸入量・供給量について(モデルナ)

ファイザー製ワクチンについては、厚労省のページからある程度の情報は得られますが、モデルナ製は新聞報道等での断片的な数値しかわかりませんでした。誰がどう管理していてどこにどれだけ配給されているのでしょうか。どこかに情報ないかな.…

厚労省の資料ではモデルナ製ワクチンの契約数は2021年上半期4000万回分、第3四半期1000万回分の合計5000万回分。報道では「9月末までに5000万回分が輸入」とあり、全量が9月末までに入ってくるようです。このうち企業と大学向け接種に3300万回、自治体向け接種に1700万回が割り当てられると報道されています。


とりあえずの結論

ワクチンは総量的には足りているけど、いつどれぐらい入ってくるかわからない上に保存期間が限られていて、しかも接種間隔を守らないといけないという無理ゲーになっているように見えます。

配給が2週間ごとにしか決まらないのに、3週間先の2回目の接種を受け付けないといけない医療機関の負担は大きいと思う。自衛のためには1回目と2回目分をまとめて確保するしかなさそうですが、これも需要を先食いしてしまいますし。

余るぐらい輸入して(破棄は覚悟で)バンバン打ちまくるのが正解なのでしょうが、難しいよね…… オリンピックがなければ、まだ良かったのに。今からでも中止してほしい。

追記

首相官邸のTweetに供給計画がありました。

ファイザーは6月末までに1億回、7-9月で7000万回、10-11月に2000万回。モデルナは9月末までに5000万回となっています。
厚労省の配給計画では、PF09(7月5日・7月12日の週)に1億回分(1バイアル6本計算)を超えます。ちょっと遅延があるので、首相官邸のは輸入計画かもしれません。

7月からの各クール1万箱については、厚労省は当初は各クール8000箱+調整枠2000箱と想定していたようです。6月時点ではWebには下記のように掲載されていました。
5月まではこの記述はなく(第8クールまでしか記載なし)、6月に入ってから供給量が減らされるとわかったわけです。

【第7クール】 6/7の週・6/14の週  13,500 箱
【第8クール】 6/21の週・6/28の週 16,000 箱
【第9クール】 7/5の週・7/12の週  8,000 箱 + 調整枠
【第10クール】7/19の週・7/26の週   8,000 箱 + 調整枠
 ※第9クールから第10クールの箱数は、各自治体に分配可能と予めお伝えしている箱数の合計です。それぞれの時期の全国の供給量からみた余裕分は、調整枠として、更に希望する自治体に割り当てる予定です。



調整枠の記述は現在は消えています。調整枠が2000箱だとすると、さらに1600箱どっかから増やしたようです。これ将来分を先食いしてるんじゃないかな。

【第7クール】 6/7の週・6/14の週  13,500 箱
【第8クール】 6/21の週・6/28の週 16,000 箱
【第9クール】 7/5の週・7/12の週  11,000 箱
【第10クール】7/19の週・7/26の週  10,600 箱



さらに追記:首相官邸分をグラフに追加しました。9月末がクールの区切り(2週間単位)と合ってないので最終週の線が跳ねていますが、概ね傾向はわかると思います。少なくとも厚労省からは輸入分は速やかに配給する計画に見えます。

問題はワクチン接種ペースが上がった時点で輸入量が下がったこと、輸入量が減ることは契約から自明であったが、それが自治体に明示される時期が遅かったことだと思います。厚労省としては、ファイザーが減るタイミングで、入れ替わるように入荷してくるモデルナを自治体に回すつもりだったのかもしれません。


資料をリンクしておきます。他に情報あればコメントなどで教えていただけると助かります。

この記事を書いた後で、他にも調査・検討している記事をみつけましたのでリンクしておきます。



続き書きました: 現在のワクチン配給システムでは自治体は多くの在庫を持たざるを得ない | ず@沖縄

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