現在のワクチン配給システムでは自治体は多くの在庫を持たざるを得ない

感染症

前回(日本の新型コロナウイルスワクチン輸入・供給状況はどうなっているのか? | ず@沖縄)に引き続き、ワクチン不足の話です。

私の住んでいる沖縄県を例に、厚労省の新型コロナワクチンに関する自治体向け通知・事務連絡等|厚生労働省から、なぜワクチンが不足しているように見えるのか(国の説明に何が欠けてるのか)を考えてみます。

ここで重要なのは、ファイザー社製のワクチンは3週間の間隔を空けて速やかに接種することが必要ということです。ワクチン配給状況を見るには、これを常に意識する必要があります。

目次


医療従事者向けの配給は理想的に完了している

一般住民の接種に先んじて行われた、医療従事者向けのワクチン配送については、厚労省は3週間後の2回目接種をかなり意識していることが伺えます。丁寧に計画・配給されています。

今回出荷分は2回接種のうちの1回目接種分を念頭に置いており、3週間後(3月22日の週と3月29日の週)に、2回目接種分を念頭に置いて、今回の配送先に今回の出荷分と同数箱を出荷する



そして、第4弾(5月10日の週の出荷)で医療従事者向け配給は完了しています。

これにより、第4弾出荷分までを合わせると、各都道府県から全国知事会に報告された医療従事者等の数(約480万人)を上回る482.9万人の2回接種分のワクチンの出荷が完了することから、医療従事者等向け接種に用いることとして出荷する新型コロナワクチンについては3月17日事務連絡の1(3)のとおり、第4弾出荷分をもって最後とする。



実際、沖縄県への医療従事者向けの配給を見ると、きちんと3週間の間隔を空けて同量が送られています。医療機関のワクチン管理の負担は比較的少なかったと思います。

第3弾からは、1バイアルあたり6回可能な注射器が添付されています。これで計算すると総数は59280人分です(全部6回で計算すると63180人分)。沖縄県の資料では第1回接種済みは61868人なので、医療従事者向けは順調に進行したと考えて良いでしょう。

医療従事者向け配給数(沖縄県向け)

クール 日程 出荷数(箱)
第1弾前半1回目接種分 3月1日の週 7
第1弾後半1回目接種分 3月8日の週 7
第1弾前半2回目接種分 3月22日の週 7
第1弾後半2回目接種分 3月29日の週 7
第2弾前半1回目接種分 3月22日の週 3
第2弾後半1回目接種分 3月29日の週 3
第2弾前半2回目接種分 4月12日の週 3
第2弾後半2回目接種分 4月19日の週 3
第3弾前半1回目接種分 4月12日の週 13
第3弾後半1回目接種分 4月19日の週 13
第3弾前半2回目接種分 5月3日の週 13
第3弾後半2回目接種分 5月10日の週 13
第4弾(1・2回目接種分) 5月10日の週 16


高齢者向けの配給では自治体や医療機関が在庫を持つことが要請されている

厚労省の通知では、高齢者向けに関しては各クールごとに配給されたワクチンを、1回目と2回目に分けて接種することとされています。この方法では2回目分を少なくとも3週間保管しておく必要があり、在庫が必要になります。

住民への2回接種を担保するためには、さらに接種券郵送・予約受付の手間を加えて、1ヶ月半以上の在庫が必要になると思われます。

1. 第1クール
出荷時期:令和3年4月5日の週
出荷箱数:全国で100箱とし、各都道府県2箱ずつ(ただし、人口が多い東京都、 神奈川県、大阪府は4箱ずつ)とする。なお、2回接種分をまとめて出荷するものであり、1回目接種分として各都道府県1箱ずつ(ただし、 人口が多い東京都、神奈川県、大阪府は2箱ずつ)、2回目接種分としてこれと同数を出荷する、という趣旨であることに留意すること。
2. 第2クール
出荷時期:令和3年4月12日の週
出荷箱数:全国で500箱とし、各都道府県10箱ずつ(ただし、人口が多い東京都、神奈川県、大阪府は20箱ずつ)とする。なお、第1クールと同様、2回接種分をまとめて出荷する趣旨であることに留意すること。
3. 第3クール
出荷時期:令和3年4月19日の週
出荷箱数:全国で500箱とし、各都道府県10箱ずつ(ただし、人口が多い東京都、神奈川県、大阪府は20箱ずつ)とする。なお、第1クール、第2クールと同様、2回接種分をまとめて出荷する趣旨であることに留意すること。



前回記事(日本の新型コロナウイルスワクチン輸入・供給状況はどうなっているのか? | ず@沖縄)で見たように、厚労省自体では在庫を持たずに、輸入したワクチンを速やかに自治体・医療機関に引き渡すような運用を行っています。いずれにせよ、在庫は自治体や医療機関が持たざるを得ません。

沖縄県向けの配給数

沖縄県への配給数は下表の通り。医療機関向けと異なり、1回目・2回目が区別されていないことに注意ください。また、自治体が希望した数全てが配給されているわけでもなく、最新の第10クールでは配分数は希望の半分にも達していません。

高齢者向け配給数(沖縄県向け)

クール 日程 希望数(箱) 配分数 実績
第1クール 4月5日の週 2
第2クール 4月12日の週 10
第3クール 4月12日・4月19日の週 10
第4クール 4月26日・5月3日の週 75 38 79
第5クール 5月10日・17日の週 163 133 133
第6クール 5月24日・31日の週 187 163 163
第7クール 6月7日・14日の週 114 114 114
第8クール 6月21日・28日の週 194 145 145
第9クール 7月5日・12日の週 189 162 162
第10クール 7月19日・26日の週 250 101
なお、第5クールから1バイアルあたり6回接種が可能な注射器等が添付されている。


沖縄県の接種数

沖縄県の「令和3年6月25日時点での新型コロナワクチン接種の件数」によると、一般県民(高齢者等)の接種回数は1回目接種が22万7659人、2回目接種完了が9万3470人です。NHKの7月5日時点調査では24万8028人が1回目接種、10万9115人が2回目接種完了です。1回目の中には県の集団接種も含まれているはずです(1万人ぐらい?)。

集団接種分はとりあえず考えずに、沖縄県・NHKの情報を元に6回/シリンジ換算で逆算してみます。沖縄県の1回接種分は194.5箱に相当します。2回目分は倍量換算して160箱。同様にNHKだと212箱と186箱になります。

沖縄県への配給は第4クールまで累積で101箱、第5クールまで234箱ですので、第5クール分の途中まで2回接種が終わっていて、第6クールまで1回目接種が終わっている計算になります。

この記事を書いている7月6日現在は、第6クールの2回目分と第7クール以降の配送分は在庫になっていて、在庫は1ヶ月分ちょっとある計算になります(ざっくり40万回分)。

現在の在庫分で予約受付可能なのは7・8クール分で約15万人分(約30万回分)です。2020年の沖縄県の60-64歳人口が9.3万人です。さらに基礎疾患のある方を加えると、現在の在庫は使い切りそうです。

59歳以下の一般の人への接種は第10クール分以降、予約受付も8月に入ってからでしょうか。まだまだ先は長そうです。

結論

現在の厚労省の配給システム・自治体の接種券と予約システムでは、1ヶ月半から2ヶ月程度の在庫を持たざるを得ません。現在は配給数が比較的多い第9クールが在庫になっているので、在庫過多に見えますがそうではありません。責任を持って3週間間隔・2回接種を確保するための必要在庫です。

また、ワクチン不足での予約キャンセルが報道されているのは、到着確認前に見込みで予約を受け付けた自治体だと思われますが、国の言葉を信じて騙されたわけでこれも責められないです。

本当の問題は、これらの配給や予約・接種システム全体の説明がきちんとなされていないことだと思われます。断片的な情報を後出ししてくる国の態度にはうんざりします。特にモデルナについては、ここで検証したような情報が一切出ておらず、報道に頼るしかありません。

ちなみに今日の新聞報道では『モデルナ社製ワクチンについて、日本への6月末まで(第2四半期)の供給量が当初計画の4000万回分から1370万回分へ約6割減っていた』・『計画が変更された時期は「正確には覚えていないが、ゴールデンウイーク前くらいじゃないか」』(毎日新聞 2021/7/6 14:24)と報道されています。供給が減っていたことを2ヶ月近く黙っていたわけです。ミッドウェー敗戦を隠していた大本営かよ。

記事で参照した資料のリンクを貼っておきます。



まだまだ私が見落としてる情報・論点があると思います。コメント等での教えていただけると助かります。

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