沖縄県「公共交通活性化に関するアンケート調査」について(2)

2018/09/05沖縄のバス

沖縄県の「公共交通活性化に関するアンケート調査」についての調査その2です。前回記事はここ→ 「沖縄県「公共交通活性化に関するアンケート調査」について(1) | ず@沖縄」。

アンケートそのものは以下の沖縄県のサイトを参照ください。

目次

高齢者の人口と事故件数

「高齢者が運転しなくても自由に移動できるように公共交通を整備する必要」があるという記事に添付されているグラフです。確かに高齢者の事故が激増しているように見えます。

しかし、昭和60年(1985年)当時の高齢者が生まれたのは大正9年(1920年)以前。免許取得適齢期は戦時中です。昔は女性の免許保有率も低かった。子沢山なので高齢になると子や孫が送迎し、高齢者自身が運転する必要性も少ない時代です。この時代と現在は単純には比較できません。

(なぜ上は平成28年で、下は平成27年なのでしょう。年度ぐらい合わせてよ)


また、このグラフだけでは高齢者が事故を起こしやすいかどうかはわかりません。事故件数が増えていたとしても、それ以上に運転する高齢者が増えていれば事故率は下がります。人口比ではなく免許保有比率や、できれば運転キロ数などを元に比較すべきでしょう。年齢別免許保有率の資料を探してみましたが、沖縄県警の資料は平成26年以降しかネットにはありませんでした※1

※1 「交通白書 | 沖縄県警察」には古い時代の資料がありません。名護市立図書館に平成2年版はあるのですがさすがに遠い…… 県警に行けば見せてもらえるものなのでしょうか?

全国的な統計は内閣府の平成29年交通安全白書にありました。これによると免許人口10万人あたりの死亡事故件数は75歳を越えると急増しています。人によって加齢による衰え方も異なりますので一概には言えませんが、65-74歳までと75歳以上は別の対処が必要かもしれません。
(この資料では死亡数が多いのは、事故を起こしやすいからなのか、事故にあった場合に致命傷になりやすいためなのかはわかりません)



では高齢者には運転をさせなければ良いかというと、そうでもありません。歩行時の法令違反件数も年齢と共に増えています。単に高齢者に運転をさせなければ解決する問題ではなく、どのように安全な移動手段を提供するかが問われていると考えます。



余談ですが、沖縄県警の資料にはこんなグラフがあります。高校生が関係した事故件数の時間帯別グラフです。「放課後の16時から18時までに最も多く発生し、次に朝の登校時間の8時から10時」などと書いてありますが、これは単に「寝ているときと学校で授業を受けている間は交通事故に合わない」だけですよね。何の分析にもなっていない。交通事故関連のグラフにはこの手のミスリーディングを誘うものが多いので要注意です。

追記(2019/12/04)

PRESIDEN Online に実は「暴走老人による死亡事故」は激減していた なぜ今の老人は身勝手にみえるのか | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)」が掲載されていました。後半はPRESIDENTらしいおっさん記事なのですが、前半の分析・グラフは読む価値あり。

そもそも死亡事故率が高いのは、むちゃをしがちな20代までの若い層と、心身が衰えてくる70歳代以上の高齢者層とであるが、すべての年齢層で死亡交通事故率が低下している中で、若い層と高齢者層のどちらも他の年齢層以上に事故率は大きく低下しているというのが実態である。

特に75歳以上の減少幅が大きい点が目立っている。つまり高齢ドライバーの事故の割合は確かに母数である高齢ドライバーの急増で増えているが、事故率はむしろ大きく低下しているのであり、高齢者の身勝手さを非難してしかるべき状況にはないことが分かるのである。

続く

記事が長くなったので、今回はとりあえずここまで。

リンク

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Posted by ず@沖縄