都道府県別のワクチン配給数をグラフ化してみた

感染症

沖縄県自治体のワクチン接種率をグラフ化してみた | ず@沖縄の続きです。

沖縄県の自治体間のワクチン接種率の差はおおむねワクチン配給数の差によるものであろう、ということがわかりました。日本の都道府県でも同様の関係があるか見てみます。

ファイザー製ワクチンの配給量は新型コロナワクチンに関する自治体向け通知・事務連絡等|厚生労働省から参照できますが、モデルナについては詳しい情報がわからず、分析ができませんでした。ところが、なんと、河野太郎大臣の個人ホームページにモデルナも含めて供給数が掲載されていました。公開してくれるのはありがたいけど、厚労省で公開すべきだと思う。
(追記:新型コロナワクチンについて | 首相官邸ホームページの方にデータありました。いつの間に)。



河野太郎大臣のページにあるExcelファイルからは8月29日までのファイザーの配分数、8月1日までのモデルナの配送実績がわかります。これと政府CIOポータルにある接種実績(9月3日付)を組み合わせて分析してみます。モデルナの8月中の配送数が欠けてるし、データの日付も違うので誤差はあると思いますが、これより詳しい情報が手に入らないので仕方がない。情報あったら教えてください。


高齢者比率とファイザーの配送数

沖縄県で見てきたのと同様に高齢者比率とファイザー製ワクチンの配送数を比べてみます。ファイザー製ワクチンは6月後半の第8クールまでは高齢者人口に合わせた配分が行われていました。そのため、このグラフはほぼ右方あがりの直線になりますが、直線から大きく外れる県がいくつかあります。

沖縄や東京など、若者人口が多い県は直線の左下になります。沖縄のワクチン接種率が他県に比べて低いのは、ファイザーワクチン配給数が少ないのが理由の1つです。

そして、なぜか山口県が直線から大きく外れて上に位置しています。山口県は高齢者比率が高い(34.3%)のですが、高齢者比率以上にさらに多く配分されています。山口よりも高齢者の多い秋田(37.2%)は逆に配分が少なめです。神奈川県も高齢者比率よりも少なめで、いろいろと妄想を掻き立てるものがあります。

なぜ山口県へのファイザー製ワクチンの配分が多いのか

ファイザー製ワクチンは第7クール(6月7日・14日の週)までは厚労省の基本計画枠を元に、県単位の希望量も勘案したうえで配分されていました。

最後の高齢者向け配分である第8クールになって突然ルールが変わり、「都道府県別の高齢者人口当たりの接種回数(述べ回数)の割合の上位5県は希望量通り」が追加されました。上位5県は和歌山県、山口県、鳥取県、佐賀県、高知県です。この第8クールで山口県は第7クールの倍以上の希望量を出し、それが満額通っています。

上位5県を抜き出して、希望量と分配量の比率、第7クールとの比率を計算してみました。

山口県の希望量・分配量は突出しています。増分の150箱(17.5万回分)は山口県の高齢者人口(65.5万人)の26.7%に当たります。2回接種としても13.3%分であり、これが山口県の接種率向上に寄与したものと思われます。

第8クールの割り当て率(厚労省・高齢者向け第8クールの新型コロナワクチン等の配分についてを元に作成)
都道府県

希望量

第8クールの
分配量

第7クールの
分配量

希望量配分率

第7クール比
全国

20219

16000

13500

79.1%

118.5%
山口県

307

307

152

100.0%

202.0%
和歌山県

227

227

129

100.0%

176.0%
佐賀県

133

133

87

100.0%

152.9%
鳥取県

98

98

72

100.0%

136.1%
高知県

105

105

92

100.0%

114.1%



多くの自治体は2回接種を念頭に適切な在庫を持ちながら接種を進めていたはずなのですが、第8クールではフライング気味に進めていた上位5県が優遇されたわけです。優遇された県の配分は無から湧いて来くるわけもなく(他の県の希望量を削って配分されたわけで)、これが果たして公平な割り当てだったのかは要調査だと思います。
(ちなみに、沖縄県は第8クールでは希望量として194箱を申請していましたが、145箱しか割り当てられていません)。

第8クールはワクチン配分が多かったのですが(全国で1.6万箱)、第9クールはファイザーワクチンの輸入が減り(1.1万箱)、ワクチン接種が予約できない人が全国的に多発してしまいました。第8クールに大量にワクチンを確保できた県はまだしも、そうでなかった県は大変だったと思います。
(Twitterからも、第8・9クールの状況が伺えます)


高齢者比率とファイザー+モデルナの配送数

モデルナのワクチンは自治体の大規模接種と職域接種に使われています。これは高齢者人口とは関係なく配分されたので、グラフの傾きは水平に近づいています。

東京は大企業が多く、職域接種の配分が過剰なほど多かったので、グラフ左上に移動しています。

沖縄は広域接種に使われる予定のモデルナすら削られて割り当てはかなり少なく、相変わらずグラフ左下です。




皆様ご存知のとおり、河野大臣が大々的に職域接種を宣伝した後で、モデルナが必要数届かないことが明るみにでました。元々減ると知っていたのに大宣伝したのは、なんだったのでしょうか。



このため本来であれば自治体への割り当てるはずのファイザーを大規模接種に流用することとなりました(いわゆる詫びファイザー)。巻き添えを食った一般の自治体向けのワクチン配給が急減し、各地で予約の取れない事態になったのは記憶に新しいと思います。 詫びファイザーは10-2から最後の15クールまで続いています。



例えば東京には毎クール(2週間)ごとに261箱(30万5370回分)が詫びファイザーとして配分されています。この分、他の自治体が割を食っているわけです。



とりあえず今回はここまで。

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Posted by ず@沖縄