「人間に勝つコンピュータ将棋の作り方」

ゲーム, 将棋, 書評

「コンピュータ将棋」「作り方」とあるのでプログラマ向けの難解な本かと思いきや、むしろコンピュータ将棋に興味がある人向けの入門書だった(縦書きだし)。

表紙の絵柄からもわかるように、2010年秋に行われた「清水市代女流王将(当時)対あから2010」の対局を題材に、コンピュータ将棋に関するさまざまなトピックが書かれている。

プログラミングの知識が若干あり、将棋がある程度指せる人であれば面白く読めると思う。確かに「技術評論社」から出そうな本ではある。


目次:

プロローグ「清水市代女流王将VSあから2010 平手一番勝負」……松原仁
第1章「負け続けた35年の歴史」……瀧澤武信
第2章「コンピュータ将棋のアルゴリズム」……小谷善行
第3章「激指の誕生」……鶴岡慶雅
第4章「YSSの誕生」……山下宏
第5章「GPS将棋の誕生」……金子知適
第6章「数の暴力で人間に挑戦! Bonanzaの誕生」……保木邦仁
第7章「文殊の誕生,あから2010の人間への挑戦」……伊藤毅志氏,金子知適,保木邦仁
第8章「習甦の誕生」……竹内章
第9章「プログラムの主戦場Floodgateの切磋琢磨」……篠田正人
第10章「コンピュータ将棋の弱点を探る――対コンピュータ将棋ソフト,人間の効果的戦略」……古作登
第11章「女流王将戦一番勝負」……橋本剛
エピローグ「名人に勝つXデイの後で」……松原仁

書籍案内:人間に勝つコンピュータ将棋の作り方|gihyo.jp … 技術評論社


清水・あから戦については、技術的には「情報処理 2011年2月号」(デジタル版紙版amazon中古)に、読み物としては「閃け!棋士に挑むコンピュータ」が既に出版されており、本対局に興味がある方は本書よりもこちらを先に読んだ方がいいように思う。

本書は「閃け!棋士に挑むコンピュータ」に比較すると技術寄りだが、専門的なことはあまり書かれていないので、そういうのを期待して買った人(私含む)にはちょっと期待はずれかも。まあ、そういう人はとっくに後述する進歩本を買ってるよね(^^;

技術的には第八章の「習甦の誕生」が興味を引く。入門書だけあってあまり詳細が書かれていないのが残念。ここだけ詳しく出版してくれないかな……


参考:実際にコンピュータ将棋を作ってみたいのであれば、定番であるコンピュータ将棋の進歩シリーズやゲーム計算メカニズムを読んだ方が良いと思う。本書は一般の方への入門の域を出ていない。

本当に1からコンピュータ将棋を作るのであれば、ソースコードと解説がある「れさぴょん本」(「コンピュータ将棋のアルゴリズム」、「Java将棋のアルゴリズム」)が良いだろう。前者はC++、後者はJavaによるプログラムが解説されている。出版年がやや古い(2005年、2007年)ので最新情報はコンピュータ将棋の進歩シリーズ等で補う必要がある。


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Posted by ず@沖縄