わかりやすい文章を書くために、Google翻訳を使う

2023/01/14読み物

昔から私は「わかりやすい文章」を書きたいと考えている。文章を書くコストは大きいが、それを「わかりやすくする」コストは比較的に小さい。わずかな時間を惜しんで、わかりにくいままの文章を出すべきではない。
(もちろん、わかりやすく書いても、それを読んだ人が正しく理解するとは限らない。曲解されることは常にある。しかし、それを盾に、「わかりにくい文章」を書くことを正当化してはいけない)。

私が現在、「わかりやすい文章」を書く上で気にしていることは、論理構造と音読である。後者も語りたいことはたくさんあるのだが、長くなるので別の機会にする。今回は、論理構造を明確にするためのツールとして、Google翻訳を使うことを提案する。

「わかりやすい文章の書き方」は既に多数存在するのだが

文章をわかりやすく書くことは、昔から必要とされていた。書籍も多数存在する。世の中で推奨されているのは、例えば、以下の書籍である。


Web上でも、たくさんの記事が見つかる。多数ありすぎるので、ここでは この文章を書くきっかけになったサイトを紹介する。


「わかりやすい文章を書く」ためのツールが必要

「わかりやすい文章を書く」ために、多くの文章が書かれている。これは、わかりやすい文章を書くことが難しく、その技術を身につけることも難しいということである。

書籍や記事では、さまざまなルールが提示されているが、それを正しく実行することは難しい。体重を減らすための本が多数出版されているのと同じ状態だ。

こんなときこそ、コンピューターの出番である。以下の論文では、NHKの「やさしい日本語ニュース」を書くための制作支援システムが紹介されている。文章を書くプロであっても、支援が必要である。素人はなおさらだ。



先にあげた「みじかい文の連続で文章をかかないといけない理由」では、実際に支援システムを使って、文章の書きかえと評価を行っている。使われている支援システムは「文体診断ロゴーン」だ。私も実際に使ってみた。このシステムは文章の評価をしてくれるが、悪文のどこを書きかえれば良くなるのかがわからない。もっと具体的に問題を指摘してくれるシステムが欲しい。

文章校正ツール」も良いツールである。わかりにくい語句を指摘し、言いかえ案を表示してくれる。大変便利だ。しかし、論理構造まではチェックしてくれない。そこが必要なのに。

論理構造のチェックのために、Google翻訳を使う

母語以外で文章を書く必要に迫られて、翻訳システムを使うことは、多くの人が経験していると思う。私の場合は、英語でメールをやりとりしたり、英文の掲示板に投稿するためにGoogle翻訳を使っている。英語が苦手な私には重要なツールだ。

英語の文章を書くときに良く知られているテクニックの一つが、双方向で翻訳することである。日本語から英語に変換した文章を、再度日本語に変換して、確認する。2回の変換を経ても文意が正しく通るようにする。これだけで、英文の品質が格段に上がる。英語である程度の文章が書ける人なら、最初から英語で書いて日本語にすると なお良い。しかし、これは私には難しい。

Google翻訳で、日本語を英語に訳した文章を確認すると、文意が通らない部分が出てくる。原文で省略された主語が間違って翻訳される。わかりにくい単語が別の意味になる。長い文章を誤って翻訳する。これらの問題は、「わかりやすい文章を書く」ための指針として指摘されているものばかりだ。ひょっとすると、Google翻訳が理解できる文章を書くことが、「わかりやすい文章」への近道ではないか。

実際にGoogle翻訳を使って、文章を書きかえてみた

過去に書いた記事を例として、翻訳してみた。

VisionFive2を長時間動かしているとCPUが熱くなってこける・動作が遅くなって操作できないという現象がでたので、状態監視&グラフ化することにしました。

我が家ではmuninを監視ツールとして使ってるので、munin-nodeを入れてサーバーから監視します。
(muninも重たいので、他にいいツールあったら乗り換えたいところです。何が良いんですかね?)

Starfive VisonFive2(RISC-V SBC) で遊ぶ – その5 muninで状態監視&CPUファンが必要 | ず@沖縄



Google翻訳を使って、英文にする。

When VisionFive2 was running for a long time, the CPU got hot and the operation slowed down and I couldn’t operate it, so I decided to monitor the status and graph it. We use munin as a monitoring tool at home, so we install munin-node and monitor from the server. (Munin is also heavy, so if there is another good tool, I would like to switch to it. What is good?)



「我が家ではmuninを監視ツールとして使ってる」が、"We use munin as a monitoring tool at home" になっている。’We’はおかしい。以下、ここに引きづられてWeになっている部分が多数ある。

“so we install munin-node and monitor from the server" は、インストール先がわからない。VisionFive2にインストールするのは自明なので、原文では省略しているが、あった方が良さそうである。

1行目の文章も長いので切った方がいいかな。


Google翻訳が出力した英文を、そのまま日本語に再度翻訳してみる。こちらの翻訳結果は違和感なく読めて、問題がなさそうに見える。

VisionFive2を長時間動かしているとCPUが熱くなって動作が遅くなり操作できなくなったので、状態を監視してグラフ化することにしました。 我が家では監視ツールとしてmuninを使っているので、munin-nodeをインストールしてサーバーから監視しています。 (Muninも重いので、他にいいツールがあればそちらに乗り換えたいです。何がいいですか?)



英文がわかりやすくなるように修正してみる。1行目の文章を短く切ると、論理展開がおかしな部分があることに気が付く。そこも書き直す。

VisionFive2を長時間動かしていると、CPUが熱くなってこける・動作が遅くなって操作できなくなった。この現象は複数回発生している。原因を調べるために、状態監視とグラフ化のためのツールをインストールした。 私は家庭内の機器をmuninで監視ツールしているので、VisionFive2にmunin-nodeを入れてサーバーから監視する。

When VisionFive2 was running for a long time, the CPU became hot and the operation slowed down, making it impossible to operate. This phenomenon has occurred multiple times. To find out the cause, I installed tools for condition monitoring and graphing. I use munin as a monitoring tool for home devices, so I put munin-node in VisionFive2 and monitor it from the server.



文章がこなれてないが、わかりやすくなったと思う。もう少し修正が必要か。

「素人には変に思える」ことが大事

先の文章は2回の翻訳を経て日本語に戻しても、あまり違和感がない。これは、私が日本語に慣れすぎているので、文章のおかしな部分を脳が勝手に補完して読み取っているのだろう。そもそも自分が書いた記事なので、書かれた内容を理解しすぎている。私は英語は苦手なので、わかりやすい文章でないと理解できない。だから、英文の方だけをおかしく感じるのだろう。

思い出してみれば、良い文章であることの指針の一つとして、「素人に読み聞かせても内容が理解できること」がある。素人は内容を推測せずに、文章のまま理解する。非論理的な文章は聞く側の負担になり、意味を取り違える。難しい言い回しや同音異義語も誤解の元だ。

Google翻訳のようなコンピュータAIは、ここで言う「素人」として最適だと思う。私は「文章」を「文鳥」と打ち間違えた記事を書いて、自分では気づけなかったことがある。Google翻訳は、その語句を素直に"sparrow"と変換してくれたので、間違いに気づくことができた。AI技術が「素人」だから使えるテクニックだ。将来、誤字も理解してくれるAIができたら、校正に使えなくなるかもしれない。

chatGPTも使える?

最近、文章作成や校正にchatGPTを使うのが流行っている。chatGPT使って英文校正を行うと便利なのも、知られてきた。



そのchatGPTを日本語の校正に使えるか、試してみた。

以下の文章を素人にもわかるように、わかりやすく書き換えてください。"VisionFive2を長時間動かしているとCPUが熱くなって動作が遅くなり操作できなくなったので、状態を監視してグラフ化することにしました。 我が家では監視ツールとしてmuninを使っているので、munin-nodeをインストールしてサーバーから監視しています"



chatGPTは、このように書きかえた。

「VisionFive2」を使用すると、長時間動かしていると、コンピューターの部品の一つであるCPUが熱くなり、動作が遅くなり、操作ができなくなることがあります。そのため、「VisionFive2」がどの程度熱くなっているのかを監視するために、グラフで見ることができるようにしました。自宅では、「munin」という監視ツールを使用しているので、「munin-node」をインストールし、サーバーから「VisionFive2」の状態を監視しています。



「熱くなって操作できなくなった」は、原文では私の体験だが、書きかえ後は一般的な話とも受けとれる書き方になっている。原文では監視項目の詳細を書いていないが、書きかえ後は「どの程度熱くなっているか」と明示されている。うーん。原因調査のためには、温度以外の情報も必要なので敢えて書かなかったのだが、誤解の元だったようです。その他はこれで良さそうです。

chatGPTもまあまあ使えますね。でも、前段で書いたように「素人の代替」として使うなら、Google翻訳の方が良いかな。もう少し、両者を使い込んでみます。

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Posted by ず@沖縄