那覇市LRT導入ルート素案について
県内二紙に那覇市の次世代型路面電車(LRT)導入検討が本格化しているという記事が掲載された。那覇市内の交通困難地域である真和志地区への導入として3案が考えられているようだ。
- 真和志LRT経路3案 南風原、真玉橋、新都心へ – 琉球新報(2018年12月8日)
- 那覇の「路面電車」どこを通る? ルート素案は「旭橋~南部医療センター」など3案 | 沖縄タイムス+プラス ニュースス(2018年12月8日)
- LRT 那覇で走るか 年度内に3案選定 次世代型路面電車 – 琉球新報(2016年4月5日)
地域公共交通網形成計画
記事内にある「地域公共交通網形成計画」は既に沖縄市や南城市では制定されている。那覇市には那覇市交通基本計画が存在したが、これを移行し地域公共交通網形成計画にする。LRTについては那覇市公共交通総合連携計画でも扱われていた。
新旧案の差
琉球新報・沖縄タイムスに掲載されていたのは下記の3案。
- 旭橋~開南~寄宮交差点~識名トンネル~県立南部医療センター・こども医療センター
- 若狭クルーズバース~県庁前~開南~寄宮交差点~真玉橋
- 旭橋~開南~寄宮交差点~真嘉比~県立博物館前~上之屋交差点
実はこの案は那覇市公共交通総合連携計画Webページにある「初期段階のLRT導入可能性調査」(2018年3月)の実施資料に掲載されているものと同じものだ。紙面に掲載されている概算事業費や需要・収支もこの資料に掲載されているものと一致する。
2010年の案では県庁前から南北(開南〜寄宮〜真玉橋〜国場〜一日橋、国際通り〜おもろまち〜上之屋〜安謝)、むつみ橋〜美栄橋〜那覇中学校〜那覇埠頭の2路線。今回の案では3路線とも寄宮十字路(真和志小学校前)を通る案になっている。
このLRTで真和志の交通困難は解消するのか?
やや古い資料だが、那覇市公共交通総合連携計画(本編)(2011年5月)に那覇市内の公共共通に関する図が掲載されている。真和志地区が手薄なのは、この図を見るだけでもわかる。
しかも、真和志地区は急な坂が多く、バス停までの移動が大変な地区も多い。真和志地区を南北に通るバスが少なく地域が分断されている、那覇中心部以外(首里・小禄など)に行くバスが無いのも問題だ。LRTでこの問題は解決するのだろうか?
那覇市公共交通総合連携計画(本編)(2011年5月)より引用
今回のLRT路線3案は既存のバス路線が存在するところを通っている。例えば案1は現在識名開南線(2番)、新川おもろまち線(4番)と重複している。新規かつ効果がありそうなのは素案2の与儀タンク跡〜真玉橋区間ぐらいか。もちろんバス路線をLRTに置き換えることで大量輸送・定時輸送を行う意味はあるのだけど、交通困難の解消ではない。
LRTを走らせられるような太い道路かつ需要のあるところは既にバスが走っているので、こうなってしまうのは仕方がないことではあるのだが。困難解消のためにLRT駅までのフィーダーバス路線を増やす計画があるのだろうか。その場合は乗り換え運賃が問題になると思う。
真和志地域から久茂地小学校跡地に建設予定の那覇市民会館に行くルートが無いのも問題。久茂地小学校は近隣のバス停からは結構歩くし、そもそもあまりバスがない。若狭ルートを一銀通り経由すれば解消するが、道路幅が問題か?
他地域との連携を図るべき
先のバス路線図で見ると那覇市内には多数のバス路線があるように見えるが、那覇市内だけで完結しているのはその一部だけだ。多くの路線は那覇中心部と他自治体間を結んでおり、那覇市住民はその恩恵も受けているわけだ。例えば、那覇バスターミナル〜古波蔵〜国場〜上間の区間は南部や中部に向かうバスが多数通っており、バスに乗るのは楽な地域である。小禄地域も同様に糸満や豊見城を通る路線があるから、交通網が成立している。
ところが市外路線は一部を除いては乗客減少・減便傾向にあり、そのために那覇市内でも地域によってはバスの運行が少なくなりつつある。これは那覇単独では解決できない問題だ。
那覇の南に隣接する豊見城市でもLRT導入が検討されている。これらの案も含めた形での提案・導入をして欲しいし、報道もその観点から深掘りして欲しいと思う。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません