高校生の路線バスやモノレール利用を促す実証実験について

2018/10/23沖縄のバス

2018年10月19日の沖縄タイムスに以下の記事が掲載されていました。これ、調べれば調べるほどひどい実験です。

那覇市内の全12校に通う生徒が対象。渋滞が引き起こす弊害などを示しながら公共交通の利用促進を促すパンフレットを配布しながら、参加者を募っている。

沖縄ICカードの協力を得て、実験参加者にOKICA(オキカ)を貸与。購入額に応じて上乗せしてチャージする。購入額5千円で6千円分、1万円で1万2千円分、2万円で2万4千円分使える。

通学のみならず、塾や買い物、土日の利用も認めている。

新聞掲載が19日なのに「申し込み締め切りは、はがきが今月22日、ウェブが23日で、いずれもアンケートへの回答を求めている」というのは、応募者を集める気があるとは思えません。新聞には書いていませんが費用も前払いで23日までです。
(高校生向けには10月から配布とのことですが、何日から配られたのでしょうか。どなたかご存知ありませんか?)

高校生に配布された資料

沖縄総合事務局運輸部のサイトに資料が掲載されています。

これを読むと「お前、真面目に利用促進する気はないだろ!」と怒りたくなります。特にひどいのは以下の部分。

最後にOKICAを返却・途中払い戻しできないのは理解できます。しかし「追加のチャージは行わないでください」というのは理解できません。市内線を下校時だけ使ったとしても月に230円*20日=4600円かかります。使い切るのはあっという間です。市外線ならなおさら。先払いすれば実証期間の3ヶ月利用できそうですが、生活が厳しい世帯では先に2万円払うのは大変だと思います。万一落としたら、と考えると大金をチャージする気にはなりません。利用実態を考えて参加者を募集しているとは思えません。

この部分に限らず、パンフレット全体から放たれる参加者を集める気の無さがすごいです。

那覇商業高実証実験はどうなったのだろう?

今年(2018年)の3月には那覇商業高校にてバスを使ってもらうための実証実験が行われました。これの結果はどうなったのでしょう?

沖縄総合事務局は交通渋滞緩和のため、那覇市中心部に位置する那覇商業高をモデル校とし、9日から3月23日まで、路線バスの利用を促す実証実験を行う。渋滞エリアを避けた郊外に「通学バスライドポイント」を9カ所設け、自家用車での送迎を学校まででなく、通学バスライドポイントへと変更を促す。

 那覇、浦添、豊見城の3市と南風原町の計9カ所のバス停付近を、通学バスライドポイントに指定。これらの地点で車から乗り換えてもらい、路線バスを「スクールバス」として活用してもらう。バス運賃は2割引きとし、100人ほどの生徒の利用を目標としている。

同年度に行われた事業の報告書が沖縄総合事務局のサイトに掲載されています。この中には高校生からのアンケート回答も掲載されています。

一部を抜粋して引用します。ここで指摘されている点は、バス利用者からすると非常に当たり前で実験やる前からわかりきっていることですよね。わざわざ混雑している・急いでいる朝にバスを使わせて反感を買っただけのようにも見えます。

この報告書には、もっと多くの回答も掲載されていますし、他の取り組みも掲載されています。一読をお勧めします。

交通費1ヶ月分ぐらい配ったらいいのに

自家用車が交通の主な手段になって以降、バスの利用者は激減しています。まったくバスを利用したことがない・利用方法がわからない若者もちらほら見かけます。

モノレールや鉄道と比較してバスは敷居が高く感じるのですよね。私も初めて行く土地では鉄道を主体に行動を考えます。バスに乗ったことがない人ならなおさらでしょう。

ですから、とにかく一度でもいいからバスに乗ってもらう・乗り方を学んでもらうというのは良い案だと思います。でも、今回の方策ではいったい何人がバス利用を試みてくれるでしょうか?

普段からバスを利用しているならともかく、もしかしたら二度と使わないバスに乗るために5000円前払いするのは勇気が要ります。さらにアンケートに答えた上で得するのは1000円だけです。那覇の市内線が230円。乗り換えして往復移動すると920円です。下手すると1日分にも満たない金額です。少なくとも1ヶ月分ぐらいを配らないと定着しないように思います。
(バス運賃が高いのも背景にありますね。東京都営バスは23区内210円です。行ける範囲が大きく異なります)

直近の沖縄県知事選挙では玉城デニーさんが「中学・高校生のバス通学無料化」を掲げて当選しました。進展があることを強く望みます。

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Posted by ず@沖縄