一昨年と同じパターンの記事「イランのウラン濃縮施設で爆発」

2013/01/29ネットの噂, フェイクニュース

共同通信や、いくつかのニュースが「イランのウラン濃縮施設で爆発」という記事を報じている。これ、2011年11月の謎ニュースと同じパターンじゃなかろうか?

前回の概略を述べると 「Sheera Flankel という記者が、イスラエル筋の情報として ロンドンタイムズ紙にイランでの爆発事故記事を書くが、他のニュースソースでは確認できず、イランも否定。なのに、これを元にしたデマ記事が日本でも乱舞」というところだ。これを念頭に今回の記事を見ていこう。


Fordo, Iran

なお、前回の調査結果はイランのイスファハンにて爆発?(2011年11月末-12月の調査)にまとめたので、詳細はそちらを見てください。

報道のソースはどこ?

まず、共同の報道を引いておく(強調は私)。ニュースソースは「英紙タイムズ」。前回の謎ニュースと同じパターンです。

【ロンドン、カイロ共同】28日付英紙タイムズは、イスラエル情報筋の話として、イラン中部フォルドゥの地下核施設で最近、大規模な爆発があり、施設が大きな被害を受けたと報じた。事故か妨害工作かは不明だという。

 一方、国営イラン通信などによると、イランの原子力庁当局者は「全くのうそで、爆発は起きていない」と否定、虚偽の報道で核協議の結果などに影響を与えようとする「欧米の宣伝活動だ」と非難した。

イラン核施設で大爆発と英紙 「施設に被害」当局否定 – 47NEWS(よんななニュース)

ロイターも引用しておきます。ここではメディア名は挙げられていませんが「ロイターはこの報道の事実確認はできていない」という一文があります。

イスラエルと欧米諸国の複数メディアは25日、イラン中部フォルドゥの地下施設で爆発があったと伝えた。ロイターはこの報道の事実確認はできていない。

「ウラン濃縮施設で爆発」との欧米メディア報道、イランが否定 | ワールド | 中東 | Reuters

今回も情報源はロンドンタイムズ紙(Sheera Frenkel)の記事

記者は またしても “Sheera Frenkel”. ニュースソースも “Israeli intelligence officials have told The Times” と前回と同じパターンです。記事本文が有料なのも一緒。

An explosion is believed to have damaged Iran’s Fordow nuclear facility, which is being used to enrich uranium, Israeli intelligence officials have told The Times. Sources in Tel Aviv said yesterday that they thought the explosion happened last week. The Israeli Government is investigating reports that it led to extensive structural damage and 200 workers had been trapped inside.

Iranian uranium-enriching facility ‘is damaged by explosion’ | The Times(Sheera Frenkel Tel Aviv 12:01AM, January 28 2013)

無料部分だけでは詳細はわからないが、ロンドンタイムス記事を元に書かれた他紙の記事から推測すると、WND.com の記事が元になっていると思われる。

テレグラフ紙からツッコミが入る

強調部は私。「WNDの記事は一週間以上経つけど独立した情報源によって確認されていない」と。複数の独立した情報で確認するのは鉄則ですよね。

A report published on Right-wing news website WND on Friday, quoting a defected Iranian intelligence officer, claimed that a massive blast had ripped through the nuclear facility, buried deep within the guts of a large mountain.
(中略)
More than a week later, the report is yet to be verified by a single independent source.

Mystery over 'explosion’ at Iran’s Fordow nuclear site – Telegraph(11:14AM GMT 28 Jan 2013)

WNDって?

先のテレグラフ記事で “Right-wing news website” と書かれていたWNDの記事はこれ。引用は敢えてしない。

WNDが どのようなメディアなのかはWikipediaにも書かれている。極めて右寄りの新興メディアのようだ。

WorldNetDaily (WND) is an American web site that publishes news and associated content from the perspective of U.S. conservatives and the political right.

WorldNetDaily – Wikipedia, the free encyclopedia

以前、AFPでも記事になっている。

独立系インターネット新聞「ワールドネットデイリー(WorldNetDaily)」は、オバマ氏の出生地に疑義を申し立てる署名に40万を超える電子「署名」を集めた。こうしたサイト上で「バーサーズ」は日々、「オバマ出生のストーリーに関する新たな疑惑」を持ち出している。

過激な米右派、オバマ氏の出生地と大統領資格に難癖 国際ニュース : AFPBB News(2009年07月30日 18:34)

WFDについてはnofrillsさんも「解説」と「WND記者の評価」を書いている。

IB Timesの記事

これによるとIAEAは「確認できず」、米国防総省筋は「信頼できない」とのこと。
(今のところ私が探せたのはIBTだけなので、他も探してみます)。

The International Atomic Energy Association said that they can’t confirm reports of the blast and said that the only reports they’d seen were in the media.

The U.S. State Department said that the report of the explosion “was not credible.”

Iran Denies Blast At Nuclear Plant, Israel Inisists It Happened, But Denies Involvement(January 28 2013 3:07 PM)

ロイター記事を見つけたので引用しておきます。

The United States does not believe media reports about an explosion at an Iranian uranium enrichment plant, White House spokesman Jay Carney told reporters on Monday.

U.S. does not believe media reports about blast at Iranian enrichment plant | Reuters

IAEAは、査察官が定期的にイランの核施設を訪問しており、事故があったとされた施設にも報道後に訪れたと指摘。「イランがフォルドゥでの事故発生を否定しているのは承知している。これはわれわれの監視結果と一致する」とし、報道されたような事故はなかったとの見方を示した。

米国も28日、この報道を信用していないとする見解を明らかにしていた。

イラン核施設での爆発報道、IAEAも「形跡ない」と否定 | ワールド | Reuters(2013年 01月 30日 09:48 JST)

もちろんイランは否定

もはや様式美ですな。下記はイランラジオなので気になる方は別の情報源を探してください。

他の検証記事

nofrillsさんが既に情報をまとめてますね。こちらも読むべし(※2013年1月28~29日追記以降にあります)→ 【デマ注意】「イランのイスファハンで原発事故」など起きていません。「放射能漏れ」もありません。 – NAVER まとめ

追記

中東の窓にイスラエル ynet紙を引いた記事が掲載されました。

28日付y net news は米大統領府報道官が、米としてはそのような報道を確認する情報は有しておらず、爆発があったとは信じていないと語ったと報じています。
記事によればイランの政府関係者も爆発のニュースは西側政府の宣伝に過ぎない、としているとのことです。

中東の窓 : イラン関連のニュース(2013年01月29日 18:18 )

過去のイラン関係調査リンク

過去の例からすると、日本国内でもこれに関連した偽情報・デマ情報が飛び交うと予想されます。皆様くれぐれもお気をつけて。