(承前)イランラジオの「トルコ、日本からの全輸入品を放射能検査」記事は誤報だと思われます

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ず’s » イランラジオの「トルコ、日本からの全輸入品を放射能検査」記事メモ』の続きです。

@jishin_dema さんから去年の官報がある、という情報をいただきました。これをもとにさらに情報を比較・調査した結果を以下に報告します。

忙しい人のために要約:イランラジオの報道「トルコ、日本からの全輸入品を放射能検査」には誤りがあり「規制内容は以前と変化はなく全輸入品が規制されているわけではない」と考えられます。





官報に記載されている通達には番号がついていますので、以下はその番号で記述します。
また各通達の日本語訳は後述の「日本語で読む中東メディア」掲載記事に従いました。

新(2013/2)は “Japonyadan İthal Edilecek Gıda ve Tarım Ürünlerinin Radyasyon Kontrolü Tebliği (Ürün Güvenliği ve Denetimi: 2013/2)” を、旧は(2012/2) “ Japonyadan İthal Edilecek Gıda ve Tarım Ürünlerinin Radyasyon Kontrolü Tebliği (Ürün Güvenliği ve Denetimi: 2012/2)” を指します。

通達 2013/2 とは?


2013/2「日本から輸入する食品および農業製品の放射能検査義務付け通達」は、日本からの輸入については特別扱いするという内容です。特別扱いする対象として 2013/5, 2013/17, 2013/19, 2013/20 の通達が挙げられています。

例えば 2013/5 は 農畜産物の輸入に関する通達であり、トルコへの輸入はこれに従う必要があります。日本からの場合には 2013/5 だけなく 2013/2 に指定された内容にも従え、ということのようです。

ですから 2013/5 には 日本(Japonya)という単語は含まれていません。2013/17, 2013/19, 2013/20 も同様です。


2013/2 から参照されている項目は以下の通り。

通達(2013/2)の変更点

図はWeb Diffを使って、2012/2から2013/2で変更となっている部分を赤字で示したものです(クリックすると拡大表示になります)。

@jishin_dema さんの言われたように、日付を除いてはほとんどの部分が一緒です。日付も含めて一緒でない部分を確認してみます。

新:(ÜRÜN GÜVENLIĞI VE DENETIMI: 2013/2)
旧:(ÜRÜN GÜVENLİĞİ VE DENETİMİ: 2012/2)
仮訳:(製品の安全性と検査:2013/2)

当然ながら通達の番号が変わっています。実は番号以外にも微妙につづりが違っています(Iとİ)。

新:MADDE 1 ‒ (1) Gümrük Tarife Cetvelinin 1-24 üncü fasılları arasında yer alan ve 11/3/2011 tarihinden sonra sevkedilen Japonya menşeli ve/veya çıkışlı ürünlerde;
旧:MADDE 1 ‒ (1) Gümrük Tarife Cetvelinin 1-24 üncü fasılları arasında yer alan ve 11 Mart 2011 tarihinden sonra sevkedilen Japonya menşeli ve/veya çıkışlı ürünlerde;

11 Mart 2011 という日付表示が 11/3/2011 になっています。他のところと合わせたのでしょうか?同様の日付表示の変更がもう1箇所あります。

新:(Ürün Güvenliği ve Denetimi: 2013/5)
旧:(Ürün Güvenliği ve Denetimi: 2012/5)
仮訳:(製品安全検査:2012/5)

対象となる通達の番号も更新されていますので、その変更です。同様の変更が合計4箇所あります。

新:MADDE 2 ‒ (1) 30/12/2011 tarihli ve 28158 (3. Mükerrer) sayılı Resmî Gazete’de yayımlanan Japonyadan İthal Edilecek Gıda ve Tarım Ürünlerinin Radyasyon Kontrolü Tebliği (Ürün Güvenliği ve Denetimi: 2012/2) yürürlükten kaldırılmıştır.
旧:MADDE 2 ‒ (1) 24/3/2011 tarihli ve 27884 sayılı Resmi Gazete’de yayımlanan Japonyadan İthal Edilecek Gıda ve Tarım Ürünlerinde Radyasyon Kontrolüne Dair Dış Ticarette Standardizasyon Tebliği (Tebliğ No: 2011/38) yürürlükten kaldırılmıştır.
仮訳:第2条 – (1)2011年12月30日28158 (第3改訂) 食品と日本放射線制御通信からの農産物の輸入日付の通達に掲載されている内容(製品安全検査:2012/2)は廃止された。

1年前の 2012/2 を廃止して、2013/2 で置き換えるという内容だと思われます。

追記:“Mükerrer” の意味について教えていただきました。


新:MADDE 3 ‒ (1) Bu Tebliğ 1/1/2013 tarihinde yürürlüğe girer.
旧:MADDE 3 ‒ (1) Bu Tebliğ 1/1/2012 tarihinde yürürlüğe girer.
仮訳:第3条 – (1)この通達は2013年1月1日から施行する。

以上、日付と通達番号と綴り以外には変更点はありませんでした。つまり 2013/2 が発行されたのは 2013/2から参照されている他の通達の内容が変更されたため、参照する番号を変えるためだと思われます。

2012/2の内容は?

結局、日本からの輸入についての規制は 2012/2 から変更されていないようです。では、2012/2 (と2013/2) には何が書かれているのでしょうか?

東京外国語大学外国語学部の「日本語で読む中東メディア」の記事「日本からの輸入製品に放射能検査義務づけ」が該当すると思われます。以下、引用します。強調は私が行いました。全文はリンク先を見てください。

日本からの輸入製品に放射能検査が義務付けられる。この検査がおこなわれる品目には、生きた動物、動物を原料とする製品、アルコール飲料、それにタバコなども含まれており、「日本から輸入する食品および農業製品の放射能検査義務付け通達」は、2011年12月30日付の官報第3改訂カテゴリー面に掲載された。

この通達により、2011年3月11日以降に輸出された日本産、および日本通過物品に関し、関連機関が、食品・農畜産省の検査対象物品輸入検査通達、林業製品輸入検査通達、タバコおよびタバコ製品、アルコールおよびアルコール飲料輸入検査通達、さらに保健省の指定製品検査通達に従い、適合証明書を発行する。こうした検査に加え、製品が放射能に汚染されていないこと示すトルコ原子力局発行の証明書が必要になる。
(中略)
通達に記載されているいかなる例外、免除事項も、上記製品の輸入においては適用されない。また、2011年3月24日付官報掲載の「日本から輸入される食品および農産物における放射能検査に関する対外貿易標準化通達」は、今回の通達に吸収されるかたちとなる。

日本からの輸入製品に放射能検査義務づけ(2011年12月31日付 Radikal紙)

つまり 2012/2の改訂(2012年1月1日)より、「トルコ原子力局発行の証明書が必要」になったわけです。イランラジオが書いていた「今後日本から輸入される全ての製品を対象に放射能検査を実施」というのは誤りで、この規制は2012年1月1日から始まっていますし、全品目でもありません。

イランラジオ以外の国内メディアで報道されないのも、今までの規制から変更はないからだと思われます。

誤報したのは誰か?

追記:この項、間違っているのはワールドブルテン側かもしれません。追記をお読みください。以下の記事は自戒も含めて残しておきます。

以下、推測誤り

イランラジオは「ワールドブルテンの報道により」と書いており、元記事は前回調査の時点で “Japon ürünlerine radyasyon kontrolü | Genel | Dünya Bülteni”と判明しています。

この記事を今になって読み返すと、以下の1文に気がつきました。

Ekonomi Bakanlığı’nın konuya ilişkin tebliği, Resmi Gazete’nin bugünkü mükerrer sayısında yayımlandı.

Japon ürünlerine radyasyon kontrolü | Genel | Dünya Bülteni

“mükerrer” という単語は「繰り返す」という意味でもあり「経済産業省は2012/2 の規制を継続すると発表した」という意味になると思われます。 そうであれば、これは通達の内容と一致します。

推測するに イランラジオはこの記事を翻訳する際に 以前の規制の継続であることに気がつかず、新規に規制が行われるものと解釈して翻訳・報道してしまったのでしょう。

そして、大手の新聞である Zaman紙の記事(Japonya’dan gelen ürünlere radyasyon kontrolü – ZAMAN)ではなく 新興メディアである Dünya Bülteni の記事を使ったのは、Dünya Bülteni が使った震災直後の写真にひっかかったからかもしれません。
(実は Zaman紙の記事とDünya Bülteniの記事は一字一句同一で、写真の有無が異なります。掲載時刻はZaman(15:14)がDünya Bülteni(15:21)よりも僅かに早い)。

以上、推測誤り。

以上、トルコ語はわからないので機械翻訳頼みの調査です。誤りもあると思われますので、ご指摘いただければ幸いです。

追記:@tkmasherさんがワールドブルテン記事を翻訳してくださいました。間違ったのはワールドブルテン(あるいはその情報源)のようです。訂正いたします。

Japonya’dan ithal edilen ürünlerde bundan sonra radyasyon kontrolü yapılacak…
日本から輸入された製品には今後放射線検査が行なわれる……
(中略)
Japonya menşeli ve/veya çıkışlı ürünlerde Türkiye Atom Enerjisi Kurumu’nun düzenlediği uygunluk yazısı aranacak.
日本が元の、あるいは(日本から)出た製品に、トルコ原子力局の発行した証明書が必要となる。
@tkmasherさんによるドゥンヤ・ビュルテニ(ワールドブルテン)記事の翻訳


謝辞:日本語による中東メディアプロジェクト」・@tkmasherさんによる翻訳には、「アルメニアのメツァモール原発」記事を書く際にもお世話になりました。感謝いたします。