「ミニスカートは寿命を伸ばす」の元ネタは?

2013/03/02ネットの噂, フェイクニュース

ミニスカートは寿命を伸ばす」。ただしソースはロシアの声(The Voice of Russia)。 しかもロシア国内の記事ではなく 英国の記事なので非常に眉唾モノなので調べてみました。

(ロシアの声には前にも 「海上保安庁が中国漁船に魚雷を発射」という誤訳記事がありましたし)

調べてみたら誤訳どころではなくて……

元ネタは Weekly World News

ロシアの声によると「高名な人類学者のエドウィン・バークハード氏」の調査によるものらしい。

高名な人類学者のエドウィン・バークハード氏が率いる英国の研究者グループは、意外な発見をした。研究者たちは、調査の結果、ミニスカートが寿命を伸ばしているとの結論に達した。

ミニスカートは寿命を伸ばす: The Voice of Russia

“Anthropologist Edwin Burkhart” を検索してみると英文の記事がいくつかひっかかる。見つかった範囲での最古の記事は2004年の Weely World News に遡る。

Writing in the Royal Journal of Social Anthropology, Sir Edwin Burkhart presents the results of over 5,000 interviews with women ages 70 to 120.

Weekly World News 20 Dec 2004

Google Books から当時の紙面を下記に引用する。表紙(左)と今回の記事(右)。

20130303-weekly-world-news

Weekly World News って?

Wikipediaにも “The Weekly World News was a largely fictional news tabloid published in the United States”(強調部は私)と書かれている。

上の紙面画像からもわかるように、日本の「ムー」みたいな雑誌だと思えばいいだろう。

ちなみに Weekly World News の日本語サイトでは、このように自己紹介されている。

ウィークリー・ワールド・ニュース(以下WWN)以外から発信された都市伝説を信じてはいけません!1979年以来、我々は数々のエイリアンやUMAから地球を守ってきました。
世界各国の政府や軍、数々の秘密結社等からの圧力に屈することなく、私たちは今日も世界に張り巡らされた情報網を元に、真実の情報を人々に送り続けています。
もし、あなたが世界の将来に不安を感じているならご安心下さい。このサイトは地球上でただひとつ、以下の極秘情報を手に入れられる場所なのです。

・UFOや宇宙人の最新情報
・世界各国政府の隠蔽工作
・ビッグフットや世界各種のUMAの最新情報
・ 製薬会社の秘密実験や生体実験
・ 超先端科学技術や古代科学技術
・ 地球上や宇宙を飛び交う謎の暗号通信
・ etc

ウィークリーワールドニュース・ジャパン | weeklyworldnews japan

Weekly World News と同文の記事が 2011年のHuffington Postにも掲載されている。著者も同一(Mark Miller)だ。7年経って再掲載されてるのに研究内容・調査人数が同一だ。

ちなみに Mark C. Miller さんの肩書きは “Humorist” になっており、冗談であることがわかるようになっている。

A prominent British anthropologist has completed a ground-breaking, 10-year study proving that women who wear less clothing live up to 20 years longer. And the fewer clothes they wear, the longer they live. Writing in the Royal Journal of Social Anthropology, Sir Edwin Burkhart presents the results of over 5,000 interviews with women ages 70 to 120.

Mark C. Miller: Science Reveals Women Who Wear Less Clothing Live Longer(08/01/11 06:24 PM ET Huffington Post)

転載・翻訳により冗談だという情報が欠落

ロシアの声はロシア国内の記事を元にしていると書かれている。 “антрополог Эдвин Беркхарт” を検索すると、Huffington Postを元にしたと思われる нудизм, стриптиз, женская одежда, долголетие, британские ученые | Советы специалистов на interfax.by が見つかる。この時点で “Humorist” は欠落している。

そのため、ロシアの声の日本語訳でも 元記事にあった “Humorist”という情報は残っておらず、冗談であったことがわからなくなっている。

情報のロンダリング

本記事は、元々は冗談であったものが何度か転載・翻訳されるうちに元ネタがわからなくなり、真偽不明のまま流通しているのだと思われる。

このような例は他の分野でも多く見受けられる。元々の情報源は都市伝説サイトだったり、特定の団体が情報操作のために流しているものが、翻訳・転載を重ねるうちにそれらしく流通してしまう。

誤ってると指摘されている情報でも訂正されずにWebに掲載されたままだったり、Botが垂れ流していたりする。情報流通コストが安くなったための問題なのかもしれない。

冗談を本気にする人たち

陰謀論をネタとして作られたゲームである「イルミナティ・カード」のアマゾンレビューにも「このカードは誰が何の目的で制作、発売しているのか興味津々」なんて書かれているので、冗談と陰謀論の境目もあやふやなのかもしれないなあ……