MP-80Kのビットイメージ印刷の話
昭和のころ、FM-8を使っていたころは EPSON MP-80Kというプリンタを使っていた。ドットインパクト方式・トラクタフィード方式のプリンタ。これで印刷したドキュメントのいくつかはまだ家にある。印刷したドキュメントを高価なバインダーに整理したんだよなあ。
ちなみにEPSONが信州精機だった時代だ。
(ドットインパクト方式のプリンタって、もはや見たことが無い人の方が多数ですよね……)
MP-80Kって?
MP-80Kは 当時最新のドットインパクト方式の漢字プリンタ。漢字ROM内蔵。第一水準第二水準が印刷できる。安価なインクジェットプリンタが出現するのは10年以上先の話。
私は MP-80Kを買うまでは私は放電プリンタを使っていた。放電プリンタなんて、見たことある人はかなり少ないよなあ……(高校の文化祭で相性占いの結果に静電プリンタで印刷した占い結果を渡してたけど、覚えてる人いるんだろうか?)
漢字が印刷できるプリンタMP-80Kは、漢字の表示ができるFM-8とセットで売られてて、相性は抜群!のはずなのだが、実はそうではなかった。
普通に文字を印刷する分にはいいのだが、ビットイメージを印刷しようとするとうまく印刷できない。画面のハードコピーは取れたはずなので、倍密度イメージ印刷が駄目だったのだと思う。MP-80Kを検索すると同じような苦労をされた方が見つかる。
- キャリーラボのMZ-80B用ワープロ JET-1000Aのこと: 手の届く範囲だけでもなんとかしたい
- MP-80K: 亀屋BLOG (この記事では漢字ROMが無かったって書いてあるけど、ジャンクだから抜かれてたんじゃないかな)
MP-80Kの罠
漢字ROMを持たないプリンタ(MP-80IIとかIII)でも、パソコン側のROMから読み出したビットパターンを送って印刷すれば漢字の印刷はできるし、文字に様々な効果(倍角・強調・斜体等)を与えるにはそちらの方が便利だった(パソコンに漢字ROMがあれば、の話。PC-8001の時代ですからね)。
漢字印刷をするために、グラフィック・プリンタの使い方という本が出ていた時代だ。
ところが、MP-80Kでは その技が使えない。倍密度イメージ印刷ができないのだ。プログラムリストを普通に印刷する分にはいいのだが、ゲームのハードコピーを印刷したり・卒論を印刷することができない。
買ってしまったものは仕方がないので、MP-80KでMP-80のような印刷ができないかと考えた。
困ったら分解するよね?
蓋をあけてみると、基盤上に載っていたのは8048CPU※1と汎用ROM(2732か2764)だった。幸いROMはソケットについていたので、ROMライタを使ってROMの中身を吸い出して逆アセンブル。ROMライタはFM-8をFM-7化するために持っていたのだ。もうこの時点で何か変な気もするが、当時のマイコンボーイはROMライタは標準装備だよね?
- ※1 “Epson MX-80 Part 1 – resurrecting an old friend – Machina Speculatrix” によると、海外版MX-80は8049だったらしい。グラフィック・プリンタの使い方でもMP-80は8049なので、記憶違いかも(内蔵ROM容量が違うだけなので命令体系は一緒)
8048を気合で逆アセンブル
8048の命令コード表はなぜか入手できたので、それの逆アセンブラをBASICで作成した。インターネットが個人で使えるようになるのは10年以上後、パソコン通信ですら存在しない時代なのに、どうやって資料を入手したのだろうか。たぶんトランジスタ技術かインターフェイス誌に資料があったんだろうなあ。
8048は8080とは全然違う1chip CPUだし、メモリマップもI/Oポートもまったくわからない。なのに、なぜかROMは全て解析・書き直されてMP-80ⅢアッパーコンパチなMP-80Kとして使っていた。どうやって解析したのかまったく記憶にないし、いま同じことをやれと言われても困る気がする。若いっていいなあ……
MP-80ⅢなMP-80K
MP-80Kが倍密度印刷できないのは、ビットイメージで転送されてくるデータとESCシーケンスが衝突していたせいだったはずだ。もはや記憶うろ覚えだけど、一種のバグだったと思う(仕様と言えば仕様だけど、ね)。そのバグを直すために、ROMをいじくってMP-80Ⅲっぽくした。
問題は解決し、印刷したいデータはちゃんと印刷できた。卒論もFM-8改とMP-80K改で印刷して提出したはず。卒論の内容は今から思えばいろいろ突っ込みどころもあるけれども……
単に卒論を印刷するだけなら、MP-80Kをいじるのは手間も金も無駄に使っている。そもそもFM-8を買ったタイミングも最悪で、買った直後にFM-7が出たし。でも、その無駄のおかげでわけのわからないCPUのコードを解析する技が身について、20年後に役に立ったりする。禍福はあざなえる縄のごとし。
ディスカッション
コメント一覧
先日投稿してから昔使っていたプリンターのこと検索していました。
私が使っていたのは精工舎のGPシリーズと思われます。
「ず」さんからあの遅くてうるさい○○買っちゃったんですか?とメール(本物の手紙ですが)来たのを覚えてます。
高校生のアルバイトで必死で買った(修学旅行で東京で買って送料もケチり稚内市まで抱えて帰った)ので最低価格の機種だったと思われます。
BMUGにアニメキャラクターの画像と真円を印刷した画像を送って、縦横比がおかしいけど対処方法を解決した人はいませんか?と書いていました。
kumajiriという言語のことも同時に質問していたのですが丁寧に解説していただきました。
たぶん、北海道と沖縄でしか使われてなかったんでしょうね(笑)
ここまで30年以上前の記憶を鮮明に思い出すなんて、ネットの威力はすごいですね。
いつか、死ぬまでには「ず」さんにお会いして親切にしていただいたお礼を言いたいものです。
ベーシックマスターのリンクから偶然こちらにたどり着きました。
漢字ロムを搭載していないドットプリンターで漢字印刷したくて、貴方に漢字コードと漢字を印刷していただいたことがあります。ず○○○し○さんですよね?
BMUGの会報で漢字プリンター買っちゃいましたというコメントを見て印刷をお願いした、日本最北の地に住んでいたものです。
あの当時は高校生とはいえ突然手紙を出して迷惑なお願いをしたものだと思います。親切な対応していただいてありがとうございます。
昔のことを思い出させる楽しい記事ありがとうございました。