【書評】 J-IDEO+(ジェイ・イデオ PLUS) -新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

2020/04/25感染症

J-IDEO+(ジェイ・イデオ PLUS) -新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を読んだ。表紙はもやしもんだが、「J-IDEO」は感染症総合専門誌であり、一般向けの本ではない。それでも対談や論考は一般の人でも読めると思う。


目次

COVID-19の正体 岩田健太郎
総説 新型コロナウイルス感染症 忽那賢志
新型コロナウイルス感染症の検査・診断 上原由紀
新型コロナウイルス感染症の治療薬候補に挙がる薬剤 山田和範
新型コロナウイルス感染症を語る 岩田健太郎
感染対策のフロントライン 岩田健太郎,坂本史衣
新型コロナウイルス感染症を知るための11論文 倉原 優,黒田浩一
2月25日の新型コロナウイルス感染症対策 岩田健太郎,岡 秀昭,柴田綾子
新型コロナウイルス感染症の入院患者対応 岩田健太郎
2020年夏に東京オリンピックを開催すべきでない(そして延期決定が正しい)理由 岩田健太郎

空気の変化を感じる

毎日毎日、刻一刻とSARS-COV-2/COVID-19の情報が入ってきて、私も含めて人々の認識は変化している。いまでこそ、ロックダウンも日常になりつつあるが、ほんの1ヶ月前までは休校すら大袈裟だと思われていた。

本書が執筆されたのは2月中旬から3月上旬で、岩田氏のブログ記事(3月19日)が最後の記事だと思われる。これは2020年3月20日から22日までの三連休の前であり、日本ではSARS-COV-2は抑え込めるのではないかという空気があったころである※1

※1 空気が変わったのは三連休の後からである。cf. SARS-COV-2, COVID-19 関連情報メモ(2020年3月23日時点) | ず@沖縄

記事中でもクルーズ船対応を除けば、日本は押さえ込み可能ではないかと書かれている。この記事の後、海外帰国者から感染が広まってしまった今とはずいぶん認識が異なっている。

これらは雑誌という媒体の制限が、却って当時の空気を切り取っている、タイムカプセルのような存在になっていると感じられる(たった2ヶ月前の話なのに)。



当時と今では状況が違うので、岩田氏も他の先生も言っていることに変化はある。状況が変わったから対応が変わるのは当たり前であり、それがどのような思考から発生しているかが大事。本書の記事は判断基準が明示されているので非常にわかりやすい。
(言っているコトの一貫性を大事にする人には受け入れにくいかもしれない。例えば、PCR検査の判断基準なども本書の対談にでてくるが、非常にわかりやすい)


PCR検査数、状況の変化

Twitterなどで時々話題になるPCR検査数についてはこのように書かれている:

もう1つ, すごく懸念しているのは患者数のピークを減らすことで負担を減らすシナリオですが, 「患者がたくさん見つかってはならない」という自らに対する呪いになってしまわないかということです.

日本では, 現在, 限定的に入院が必要な人にだけPCR検査をする方針で, 風邪症状のみの人にPCR検査を行っていません. これはすごく正しいことで, 偽陰性が多いとわかっているPCR検査を無駄遣いし, 本当は陽性患者なのに陰性だと確定してしまうことで感染を広めてしまうような失敗をしないためには非常に重要です.

しかし, 制限をやり過ぎてしまうと, 例えばある地域で起きているアウトブレイクのような場合も診断基準を満たしていないから検査しませんとしてしまい, 感染の状況にすら気づいていないという状況が生まれかねません.

だから, 検査をしなければいいというものでもないのです.

非常にわかりやすい。まるで現在の混乱を予言しているかのようだ。

リンク

本誌内の2つの記事は岩田氏のブログにて読むことができる。

感染症

Posted by ず@沖縄