ヒッグス粒子(Higgs boson)が見つかったの? / 報道メモ

2011/12/08科学




追記:記事末に入門記事へのリンク集を置いてあります。



← まずは当事者のCERNによるセミナーの告知:
CERN PUBLIC SEMINAR (13 December 2011)
そっけない告知ですね。論文との絡みもあるんで、こうなるんだろうけど。
(プレスリリース:Update on the search for the Higgs boson by the ATLAS and CMS experiments at CERNはもうちょっと親切)

本当に見つかったかどうかは13日待ちということで。
(最近、科学系では発表聞いて「え?」って思うこともあるんで、半分期待しつつ…)


CERNによるtweet。ATLASチームとCMSチームが相互の検索結果を付き合わせてるよ、というもの。2週間ほど前。




後者のtweetは「2012年もLHCを運転 | KEK」関係かな。


先の Higgs の記事で参照されているCERN ATLASの実験グループには日本からも参加していて、解説サイト(http://atlas.kek.jp/)がある。
写真を交えていろいろ解説があって参考になる。

やさしい「LHCでの物理」入門とかキッズサイエンティスト【ヒッグス粒子と質量】とか。解説記事へのリンクは文末にまとめましたので、そちらもご参照ください)


最新情報はLHCアトラス実験オフィシャルブログにあるらしいので、そちらにいくと、こんな記事がある。
2011-12-05 – LHCアトラス実験オフィシャルブログ

Higgs探索に関する最新結果を12/13 14:00(CERN時間)から、ATLASとCMS実験のSpokespersonが報告することになりました。現在、この報告用の結果をまとめている最終段階です。

うーん。やっぱりわからないね(^_^;

同様のアナウンスは「UNIVERSITY OF TORONTO | Media Advisory – Major Announcement Re: Higgs boson」にもある。



日本での報道は読売新聞が速かったようで「世界の物理学者が探し続けた「神の粒子」発見か : 科学 : YOMIURI ONLINE」(2011年12月8日03時03分 読売新聞)という記事が出ている。

ここにはこう書かれている。

物質を構成する素粒子に質量を与えたとされる未知の粒子「ヒッグス粒子」を見つけた可能性が高まり、ジュネーブ郊外にある欧州合同原子核研究機関(CERN)は13日、緊急の記者会見を開く。
「神の粒子」とも呼ばれるヒッグス粒子は、現代物理学の基礎である標準理論を説明する粒子の一つで、世界の物理学者が40年以上探索を続けてきた。存在が確認されれば世紀の大発見となる。

その結果、今年10月末までの両方の実験データの中に、ヒッグス粒子の存在を示すとみられるデータがあることが分かった。8月までのデータでは、存在する確率が95%以下しかなく、データのばらつきかどうか判断がつかなかった。

いくつか新情報がある。「可能性が高まり」というのはどこ情報だろうか? 「ありませんでした」でも大発見ではあるので、緊急のセミナーだけでは判断できないと思うんだよね (むしろ、「ありませんでした」の方が大発見なんじゃないかな…)。

以前、こんな記事もあったし (「神の粒子」存在示すヒント失われつつある、CERN 国際ニュース : AFPBB News)。
ATLAS Experiment」こちらも無いんじゃないか系かな。
LHC物理ニュース」では「どっちに転ぶか、はたまた別の所にでるか」だ、そうです。

他紙報道:


先の記事ではヒッグスのことを、がんばって図解で説明しようとしてるけど、限られた紙面だと厳しいですね。

わかりやすい説明がQuantum Diariesにある。
英文だけど。
Electroweak symmetryのような専門用語がわかりにくいかもしれないけど、そこだけWikipediaに頼れば、そんなに難しくはないと思う。
(この粒子の顔アイコンはセンスあるね。どうやって作るんだろうな、こういうの)

(日本語・英語の解説記事は記事末にまとめてあります)


こちらは nature.com の 12/4 の記事。Nature News Blog: CERN manages expectations around Higgs rumorsとある。
この記事では関係者への取材により「Higgsに関して何か大きな発表がある」ということを掴んでいるようなので、このへんの筋から、先の新聞記事になったんでしょうねえ。

追記:12/2のHiggs rumour anaylsis points to 125 GeV « viXra logの方が重要かな? かなりいろいろ書かれてる。コメント欄も興味深い。
The Reference Frame: Higgs search on Dec 13th: will remain inconclusive」にもあるように12/2ごろから何かがある、という情報が出てきてるような。


BBCの「Cern scientist expects 'first glimpse’ of Higgs boson」はかなり詳しい。このへんはさすがイギリスだなあ。日本の新聞社もこれぐらい書けるといいんだけど。

この記事では「The teams at Cern will not claim next week’s result as an official “discovery" – a so-called 5-sigma event. 」と書いてありますね。
(和訳:ぽくての生態記録 : ヒッグス粒子がみつかった?)


あと、読売新聞記事に「神の粒子」とあったのが気になって調べたんだけど、海外では「God Particle」を冠した啓蒙書が何冊も出てるのね。「The God Particle: If the Universe Is the Answer, What Is the Question?」とか「Massive: The Hunt for the God Particle」とか。

日本でも「神の素粒子 宇宙創成の謎に迫る究極の加速器」や「神がつくった究極の素粒子」が出版されているんで、まあ、神の粒子って書いてもいいのかもしれないけど… あんまりピンと来ないんだよなあ。Higgs ってそこまで重要なんだっけ? いや、重要なんだけどさ。「神」って言っちゃうかなあ?


追記:野尻美保子先生のtweet



↑の噂ってのはこれかな? 「Higgs rumour anaylsis points to 125 GeV « viXra log」に「A rumour that reached our comment section suggests that a signal for the Higgs boson has been seen at 125 GeV with 2-3 sigma significance.」と書かれている。
What would a Higgs at 125 GeV tell us? « viXra logという記事も。
LHC物理ニュース」(和文)。


LB200とかTA100は放射線測定器。最近野尻先生がブログ記事「 定量限界」(油断するなここは戦場だ )で書かれていたように、ヒストグラムとかバックグラウンドをちゃんと考えないと何を測ってるかわかんなくなるので、ちゃんと測ることが大変だという話。



こんな感じのグラフ「Search for the Higgs boson in H->WW(*)->ll’nunu (l,l’=e,mu) decays with 3.0 fb-1 at D0 in Run II」を念頭にお話されてる、と思う。



食品の放射線とかなら周囲を鉛で囲ったりしてバックグラウンドを減らせるけど、そういうわけにはいかないので、ひたすら時間をかけて大量データを集めて、それを統計処理すると。このへん? 「LHC-ATLASにおけるH->WW->lνqq崩壊
モードによるヒッグス粒子の探索
」。



CMSとATLASの2チームがLHC計画でヒッグス探索をしていている。ECALは「検知器と衝突した際に発する熱を測定することで粒子の種類を特定する電磁カロリーメーター (Electromagnetic Calorimeter: ECAL)」。CERNのサイトに組み立ての模様「CERN Document Server: End of the CMS ECAL Endcaps construction」が掲載されている。


解説記事へのリンク:

資料:

科学

Posted by ず@沖縄