沖縄本島のバス路線について考察してみる(1)

2016/09/24沖縄のバス, 読み物

観光客どころか地元民も乗り慣れないと迷ってしまう沖縄本島のバス路線。
実は路線の成り立ちには法則があって、乗り慣れている人はそれに従って検索しているから迷わないのではないかと思っています。

その法則について少し考察してみます。

バス路線の源は1950年代前半

最初の民間バス会社である沖縄バスの創立が1950年。1951年には既に14社が乱立していました※1。それらのバス会社は統合を経て現在の4社に至りますが、バス路線も当時開設された経路を元にして拡充・統廃合されて現在に至ります。
現在のバス路線の謎を解くには1950年代のバス路線についての知識が少し必要です※2

※1 グダグダ(β) 昭和26年のバス
※2 当時のバス路線図はまだ探せていません。そもそも路線図自体があったのだろうか? - 追記:見つけました 1947,1949年の公営バス路線図(沖縄公文書館)

撮影日時:不明 / 所有者:那覇市歴史博物館
国際通り さくらバス待合所(現在の三越)付近
配信元:那覇まちのたね通信
事業主体:NPO法人ちゅらしまフォトミュージアム・地域情報エージェント株式会社

国際通りや開南・壺屋などに各社のバス待合所があった

バスは那覇と他の地域の運送手段であった

那覇と言っても軍民政府・琉球政府と牧志〜神里原に至る市場です。これらの場所と沖縄本島内の他の地域を結ぶためにバス路線網が発達しました。

バス会社が乱立した1950年代初期はまだ国際通りも拡幅されていません。琉球政府ビル(現県庁)の完成が1953年。国際通りが拡幅・整備されたのが1954年。安里から北に抜けるバイパスの開通は復帰後のことです。

この状況で神里原から牧志に至る市場から県内他地域をどう結ぶか?

結局、牧志〜安里から旧1号線(58号線)を経て中北部に至る経路と、神里原・開南から姫百合通りを経て南部に至る経路の2つが主たる路線になります。

20160923-naha-1

OpenStreetMapを元に作成

那覇バスターミナル開設後も起点が移動しただけで、那覇BT→国際通り→中北部と、那覇BT→開南→南部の2つの大系統はそのまま保存されました。
(国際通り・ひめゆり通りの両方を通る市外路線は極めて少ないため、この2大系統間を移動したい場合は乗り換えが必要となります)

基幹路線と枝分かれ

那覇から各地へ向かうバスは基幹となる経路を途中まで並走し、その後枝分かれして各地へ向かいます。
南北に長い島なので選択の余地が少ない、昔は大通りが少ない(軍用道路ぐらい)のと、なるべく需要の大きな場所(市場や米軍ゲート前)を通過した方が効率的だからだと思います。

特に中北部向け路線は、途中まで極少数の経路を並走しています。那覇〜コザ十字路間はその際たるもので、本数が多すぎる弊害を減らすため基幹バス(急行バス)の導入すら検討されています※3

この基幹となる経路を把握すると移動・乗り換えがスムーズにできるようになります。

※3 那覇〜コザ間急行バス実証実験(2016年秋から)

那覇から南部に行くバスは原則として開南を通る

現在も那覇から南部に行く市外線は開南を通ります(下記バスマップ参照)。
ですから南部方面にバスで移動する場合は那覇バスターミナル(上泉)・那覇高校前・開南のいずれかのバス停を起点として検索するのがわかりやすいです。

20160923-busmap-1



国際通り(牧志)から南部に行く場合も、開南まで歩いてからバスに乗る方が効率的です。

那覇から中北部に行くバスは原則として県庁北口を通る

昔は北部に向かう路線は那覇BT→国際通り→58号線の経路だけでしたが、混雑する国際通りを回避するために58号線経由(久茂地経由)が分かれ、58号線の渋滞回避のためにバイパス経由ができました。
これは那覇〜普天間〜コザを結ぶ路線が並走するようになっただけで、目的地は同一です。

中・北部に行くバスを検索するなら、久茂地経由と国際通り経由が分岐する前のバス停(県庁北口)を起点にするのがわかりやすいです。
(なお国際通りの混雑を避けたい時刻であれば、琉銀本店前農林中金前やおもろまち駅前から乗ると便利だと思います)

※ 追記:Twitterにて補足いただきましたので訂正します。ありがとうございます。 cf. https://twitter.com/cosecseccot1604/status/779537273016586240 https://twitter.com/jtcy_obzaiya/status/779523509336715268

中北部・南部間を移動する場合は原則として那覇BTでの乗り換えが必要

現在のバス路線は那覇と他の地域を結ぶためのもので、他の地域間を結ぶ路線は少ないです。
中北部から南部へ移動する場合も、一部の路線を除いては直接移動できないため、大抵は那覇での乗り換えが必要です。

先に述べたように、国際通り・ひめゆり通りの両方を通る路線はほとんど存在しないため、乗り換える場所はバスターミナルが一番便利だったりします。
場所によっては非常に遠回りですが仕方ありません。

実は那覇市内でも国際通り以西の那覇から沖縄本島南部、ひめゆり通りより東の那覇から沖縄本島北部に行くのは非常に不便(乗り換えが必要)です。

極少数の例外路線は便利に使える

これまでに述べた原則の例外となる路線を知っていると、移動をショートカットできて便利なことがあります。東陽バスに多い。

高速バス(空港〜那覇BT〜国場〜高速道路)

329号線添いから中北部に行ける数少ない手段の一つ。高速道路のバス停が既存路線と接続されていないことが多いため降りてから往生することも。

東陽バス30番泡瀬東線

329号線添いから国際通り以西(美栄橋駅)に行ける路線。ジュンク堂に行くときに便利。与那原から329を北上する唯一の路線であり、与那原に行くのに開南を経由しない例外路線。

※ 200番糸満おもろまち線・235番志多伯おもろまち線が58号線を通りますが、本数が少なすぎて使えない。
※ 毎週日曜日は「トランジットモール」のため、国際通り経由のバスは美栄橋を通りますが、南部からのバスは通りません。

東陽バス31番泡瀬西線

開南〜ひめゆり通りを経由してコザに向かう希少路線。

東陽バス91番城間線(191も)

浦添と与那原・馬天を結ぶ路線。首里・環状2号から南部に行ける数少ない路線でもある。

自治体バス

豊見城市内一周線、ITOちゃんバスなど。沖縄本島のバス案内アプリ比較に一覧があります。

おわりに

旧国鉄の鉄道網が上野と東京で分かれていたように、沖縄のバス路線は開南と牧志で分断されています。
これに気づかずにバス路線を検索していると、かなり遠回りだったり不便な経路を案内されるかもしれません。

(このシリーズ続くかもしれません)

沖縄のバス, 読み物

Posted by ず@沖縄