サーチナの記事を精査してみたら…

2011/10/27ネットの噂, フェイクニュース

昨今ではネットでいろんな情報が手に入るんだけど、情報の質は玉石混交というのすら過小評価になるぐらい差が激しい。特に海外ネタになると、仮にそれが海外の東スポや虚構新聞のような情報であっても鵜呑みにしてしまう人も多い。

最近では、イランラジオというところが流した「トルコ地震で、隣国アルメニアの原発に被害」という記事が裏も取らずに にちゃんねるやtwitterで流布され、さらにデマやら外国蔑視が加わって散々な状況になっている。

ここでは、そんな記事を見かけたときに私がどうやって裏を取ってるかを、ちょこっと書いてみる。例題として「中国から飛来した黄砂から放射線物質セシウム検出、韓国が警戒感 2011/03/21(月) 14:45:13 [サーチナ]」を使う。半年以上前の記事だけど、なぜか最近ブックマークされてて目に付いたので。


まあ、そもそも「サーチナかよ!」って言われそうだけど (^_^; 。 ここは結構誤報もやらかす。イランラジオも怪しい。そういうメディアの評価を知っておくと少し楽。

さて、報道された文章を読んでみよう。

ビョン議員は、同国の原子力安全技術院の資料をもとに過去10年間(1998年―2010年)のデータを分析したところ、毎年黄砂が集中的に発生する2月から4月にかけて、地表のほこりや大気中の浮遊物から放射性セシウムを検出した。

地表から検出されたセシウム濃度は、2002年3月の1平方メートルあたり252ミリベクレルがもっとも高く、6月―10月は検出されなかったという。大気中からは、2002年3月の9.87マイクロベクレルが最も高く、5月―11月はほとんど検出されなかった。

中国から飛来した黄砂から放射線物質セシウム検出、韓国が警戒感 2011/03/21(月) 14:45:13 [サーチナ]

1平方あたり252mBqという数値を押さえておく。あと、過去の核実験の影響だとして、そんなに137Csがあるんだろうか?



「黄砂 Cs-137」で検索する。「ず's » にちゃんねるまとめサイト等、見たくないサイトをgoogle検索結果から消す」で書いたように、検索の障害になるサイトを消しているんで割りと簡単に調べられる。

いくつかチェックすれば「黄砂とともに飛来する放射性セシウム(137Cs):(農業環境技術研究所)」までは簡単に辿りつける。こんどはこの記事の内容を見てみる。


こういう記述がある。「2002年3月には、青森や新潟など北日本や日本海側の複数地点で、チェルノブイリ原発事故以来最大となる137Cs大気降下量が記録されました」「2002年3月には近年で最大となる0.82Bq/㎡の降下がありました」ということで、韓国での降下よりも多い数値が実は同時期に日本でも観測されていた…と (単位を揃えれば韓国のは 0.252Bq/㎡ですね)。
(この項目、疑問点があるので鵜呑みにしないでください。後述)

ということで、本件は「そういうこともありそう」という感じ。あとは韓国側の情報を追っかければもっと詳しいことも判るでしょうけど、私の興味的にはこれで充分。137Csの起源や何故2002年3月に多かったかは、「黄砂とともに飛来する放射性セシウム(137Cs):(農業環境技術研究所)」に簡単に書いてあるので興味のある方は読んでみるといいと思う。

また、セシウム137によると137Csの半減期は30.1年。2003年から10年経ってないので、80%ぐらいにしか減ってない。ということは、今後も日本国内で0.6Bq/㎡ぐらいは降ってくることがあるかも? と考えておけばいいかな。これで空間線量が上がったのを検出して騒ぎ出す人がいるかも、ってことも予想がつく。

このサイトが農林水産省 であり、韓国発の情報とは別ソースであることも情報の信憑性を裏付ける。いくら調べても同一ソースにしかたどり付かない情報は基本的に怪しいと思っていいからね。

ここまで調べるのにたぶん5分もかからない。記事をtweetする前にちょっと調べる癖をつけておくのは大事。
と、ここで納得していれば幸せだったのに、別のところが気になって泥沼に…(^_^;


気になったのは、サーチナ記事中の「大気中からは、2002年3月の9.87マイクロベクレル」がどれぐらいの量なのか。これ単位がないんで判断できない。世間で言われてる基準は1mSv/年とかそんなもんなので、そこに合わせたい。で、調べてみたんだが…

こっから先は韓国語と格闘しないといかんので、ちょっと骨が折れる。幸い韓国語と日本語は文法構造が近いので自動翻訳でもそんなに外れないだろうから自動翻訳頼みで頑張ってみよう。

“9.87" 137Cs 2002 site:krで、韓国内のサイトをざっくり検索する。open21.or.krというサイトに以下の記事があった。or.krの信憑性はどうなんでしょうね、と、眉につばを付けつつ先に進む。自動翻訳によると「中国発の黄砂に、"放射性物質"」という京郷新聞の記事。内容はサーチナの日本語の報道とだいたい一緒だけど、単位が違う。こちらは立方メートルだ。あれれれれ?
原文にも“㎥”って書いてあるから翻訳ミスではなさそう。

放射性降下物試料から検出されたセシウム濃度は、2002年3月㎥当たり252ミリベクレル(m㏃)で最も高く、6〜11月にはほとんど検出されなかった。 大気部ユジンは、2002年3月㎥当たり9.87マイクロベクレル(μ㏃)のセシウムが検出され、濃度が最も高く、やはり5〜11月にはほとんど観察されなかった。

中国発の黄砂に、"放射性物質"

今度はこの記事の韓国語タイトルで検索をかけてみる。同内容の記事があれば、そっちがひっかかるはずだ。
중국발 황사에 ‘방사성물질’」を検索して上から自動翻訳をかけまくる。と、こういう記事が。「中国発の黄砂に、"放射性物質"入っている」(kyunghyang shinmum=京郷新聞)。この記事には図で9.87μBq/㎥とある。京郷新聞は㎥で報道っと。

少なくとも京郷新聞では9.87μBq/㎥で報道されてるっぽい。ということは、どちらが正しいか調べないとわからない。他の新聞も探してみたけど、見つからなかった。たぶん探し方が悪いんだろうな…

まあそれはともかく。137Csの換算は(μSv/h)/(Bq/m3)=5.9E-02でいいっぽい。単位を変換すると (nSv/h)(μBq/m3)=5.9E-05か。なんか凄く小さい値になるんですけど。0.00058nSv/h。24時間365日でも5.1nSv/年。これでいいんだろうか?という疑問を持ちつつ今回はここまでにしておこう…




冒頭で書いたイランラジオの情報については「ず's – アルメニアのメツァモール原発」にまとめました。こちらも一読いただければ幸いです。そしてできれば、誤情報を広めている人に教えてあげてください。