これなら買い! のiPad電子雑誌アプリ「将棋世界」

2010/12/09iPad, 将棋, 電子書籍

つい先日、「電子書籍アプリを出版社別に出すのは止めて欲しい」なんて書いたのですが、電子書籍がうまくいくかもしれない分野があって、その一つは雑誌だと思ってます。
雑誌は「複数号あると嵩張るのをまとめられる」「あまり保存に拘らない」「定期購読してもらえるかも」という特徴があるので、電子書籍の利点を生かせて欠点が気にならない傾向があります。書籍だと下手にまとめられると検索が面倒だし、思い入れがある書籍は保存したくなりますので、ちょっと相性が悪い。新聞はメリットが生かせそうですが、紙面をうまく電子化して毎日配信するのはきつそうな気もします。

そういうメリットを生かした上で、独自の工夫と電子化との相性を生かした良アプリが「将棋世界」。同名の雑誌(将棋世界)の電子版です。


何が凄いって、収録されている盤面が動かせる! お手元に新聞がありましたら、そこの将棋や囲碁欄を見ていただけるとわかるのですが、紙面の都合上、盤面図が大事なところしか載ってなくて、途中は棋譜で書かれています。将棋の場合だと、▲7六歩△3四歩▲6六歩△8四歩…のような形。読む側は盤面図を参考に「脳内」で駒を動かしていくのですが、初級者ではこれは難しい。実際に盤駒を出して並べる方もいらっしゃいますが、ちょっと大掛かりだし、出先ではできないですよね。それが、このアプリだと、そのページの盤面図をそのまま動かせます。↓のYouTube画像で動きが見れます。



この盤面図、ちゃんとピンチ操作で拡大できるのはもとより、その棋譜を将棋ソフト「柿木将棋」に渡すことができますので、自分でいろいろな手を指して試してみることができます。


電子書籍として当たり前に欲しい機能「目次を押せば該当ページに飛ぶ」「掲載されている棋譜一覧が見れる」「WebリンクはちゃんとSafariに渡される(広告のリンクも!)」はちゃんと実装されています。電子雑誌の中にはスキャンしただけってのも多くて、目次ページでタップしても移動しないものもあるんですよねえ。ほんと、良くできてます。



価格はアプリが230円無料になりました(2010年12月号を含む)。新しい号はその都度アプリ内購入で600円。紙版は750円なので一見オトクですが、付録が付いていません。また個人情報を掲載しているページ(懸賞の当選者名など)が消されていたり、詰将棋などの懸賞に応募できないなどの差があります。詰将棋はソフトに簡単に渡して解けちゃうから仕方ないですね…また、発売日は紙より10日ほど遅れる上にアップルの許可待ちになります。
(もしかすると、これはこの号だけかもしれません。次号がでたら、このへんもう一回調査してみます→追記:やっぱり毎号12日~15日ごろ発売になってます)

これは買い! なんだけど紙も欲しいんだよなあ。発売日も遅いし。日経電子版みたいに定期購読してたら安くならないか聞いてみよう。
追記: 問い合わせしたら、さっそく回答をいただきました。雑誌発売もとのマイコミさんと相談していただけるそうです。期待!
(問い合わせ先はアプリの「操作説明」の末尾にありました)



電子書籍に興味がある方は買って試してみてもいいかもしれません。アプリ自体がお試し版になってて230円無料で1号読めますので。

将棋世界はよくできてるけど、他の業界が真似するのは厳しいだろうな。将棋の場合は、棋譜は棋士用データベースやWeb掲載のためにデジタル化されていることが多いですし、入力もさほど困難ではありません。また、棋譜の埋め込みも同じ仕組みで使いまわせますので、たぶんコストもあまりかからない。その割には利用者が受けるメリットが大きい。しかも将棋を愛する優秀なプログラマが確保できている。他の雑誌がこれを実現するのは結構大変だと思います。思いますが、こういう面に電子雑誌の未来はあると思うんで他の雑誌も頑張って欲しい。

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Posted by ず@沖縄